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デジタルにない風合いと厚みを求めて、オリジナルの本をつくろう!
2020年の確かそれは平凡な秋の日。
どこの誰だか知らない岸本さんから「本をつくりたいので見積が欲しい」という電話を頂いた。
記憶を辿って「本」と書いたが、その突然の電話では「パンフレットをつくりたい」と言われたかも知れない・・・。
「俺はこんな感じの活動をしていて、こんな本が作りたいんだ!」
もし、そんな熱い想いを聞かされたなら、もうちょっと親身になって何が出来そうか深堀していく。
でも、「見積もりが欲しい」というワンフレーズを聞いただけなら、とりあえず予算感が知りたいのだろうと受け止めてしまう。
無責任とか、投げやりとかでなく、サイズ、ページ数、紙厚を一般的な仕様に設定し無機質に金額をはじく。
アナログというよりはデジタル的に、事務的に。
こういう見積依頼への対応はそこまでが仕事で、それ以上はない。
実際に仕事になってもならなくても、それはお客さまが決めること。
「何かあったらまた相談してください」ってメールの文末に沿えて寝て待つのみ。
年が変わって2021年の2月、忘れた頃に岸本さんから「今から紙の相談に行きたい」という電話を頂いた。
自社サイトのtitleタグに「直接会って相談できる滋賀県守山市の印刷会社です。」という設定されているからか?
Googleマイビジネスさんの誘導か?
近くで印刷会社ということで検索して頂き、前触れなく気軽にお店に来てもらえるので、当社の体制は基本的にはいつでもウェルカム。
1階のガラスの扉を開けたらすぐに見える場所から、事務の女性陣がカウンター越しに「こんにちは」とあいさつをする。
中小の印刷会社としてはやや珍しく、個人の方も気軽に出入りできる印刷会社なのだ。
そんな話はどうでもいいので、端っこに追いやって続きを話すと、やってきたのは【彼】ではなく【彼ら】だった。
20代後半から30代前半の4人の彼ら。後で聞いて納得の風貌の彼らはサーファー仲間。
北海道にサーフィンTRIPに行ったので、そこで撮影した写真を本にしたいということだった。
「こんな感じの本がつくりたい」と見せてもらったのは、ラフな感じの特殊紙でしっかりしていて、そこそこ厚みもあるイイ感じの写真集だった。
本の真ん中を2か所針金で止めているようなチープな中綴じ製本ではなく、無線綴じ製本である。
見積もりの際に、そう確かにパンフレットと聞いていたので、中綴じ製本で見積したし、紙もマットコート90㎏と写真集には頼りない設定だった。
電話やりとりで想定した予算感なんて、これを見せてもらったら変わってくる。
加えて、単なる思い出Bookでなく、できればメンバー各人が個人事業主みたいな感じでお店で販売したり、手売りしたいとも聞いてしまった。
そうなったらパンフレットって言葉は完全に間違い。
予算感を大きく変えずに、それに値する風合いと厚みをもった写真集としての体裁を保てる仕様で再提案した。
A4判(48ページ)
表紙4Pは上質紙180㎏
本文48Pは上質紙135㎏
無線綴じ製本
背幅4.7mm
上質紙は流通量も多くて安い。非塗工なので紙面にラフ感もあるし、180㎏や135㎏を使うと厚みも出る。
この打合せの後、見積書の品名を「北海道TRIPサーフィン写真集」に変更した。
「サーファー」×「北海道TRIP」という設定。
そしてこれの本をVol.1として販売していきたいという謎なお題が私のモチベーションを加速させていった。
興味があるから関わってみたい、知りたいという有機的なものに変わっていく。
いったいどんな内容の本なのだ・・・。
この人たちはどういう道のりを経て、本を出そうという思考に辿り着いたんだ・・・。
ちょっとしたワクワク感、野望や、夢さえ感じられるようになる。
デザインは4人ぐらいの編集者が担当しているようだ。
編集者といっても本をデザインするのは初めての様子。
しかもMacのKeynoteというプレゼンソフトを使って進めているという。
Windowsでいうパワーポイントを使って本をつくる感じ。
印刷デザインのお決まり事、紙の端に3ミリの塗り足し(ヌリタシ)が必要ということもご存じなかった。
印刷現場に無造作に積みあがっている刷本を引っ張ってきて、普段はあまりしない印刷知識を説明する。
無線綴じで紙が厚くなると見開きのセンター部分は開きにくくなり、見づらくなるのでノドの空きも必要になる。
口頭で説明すると想像しがたく「???」の状態に陥るが、今はネットで検索すれば詳しい説明が上位表示される便利な時代だ。
以下のサイトを見てもらってノドのマージンについて勉強してもらった。
↓
【本をつくる場合のノドのマージン設定】
https://www.printsassi.com/date_guide/data-musen.html
背表紙の部分に本のタイトルも入れたいが幅はどれだぐらいになる?と聞かれたので、
背幅サイズはこちらのサイトで計算させて頂いた。便利なサイトだ。
↓
【背幅の計算】
https://www.graphic.jp/comic/dojinshi/column/cover_tips
完全データを完成させて最終入稿をしていただくまでに2~3階の校正やりとりをして、いざ刷版を出力。
ここまでは、パソコンを使ってデジタルデータを処理してきたが最後の印刷工程はアナログに戻る。
色というのは実は非常に曖昧で、見ている人、環境や媒体(紙)により何とでも変わる。
なので、印刷立ち合いにお誘いして処女作が刷り上がっていく様子を見て頂いた。
印刷機で出来る色の微調整がある。
刷り上がった本のタイトルは「KEEP ON・・・」 続けて行こう!という意味。
滋賀県出身者が中心の10人のサーフィンして、バンドして、歌い笑いある生き方が詰まっている。
Vol.1は北海道TRIPで見たもの感じたものが写真や詩でちりばめられているのだ。
サーフィンの写真集というジャンルでは単純にくくれず、メンバーのお店や作品の紹介、アイヌの魂について書かれたページもある。
写真集というジャンルを超えた固有のものとなっている。
驚いたことにKeynoteで初めてつくったと本とは思えないくらいでセンスも良い。
本と言えば、インデザインやイラストレーターを使ってデザインするものと思っている我々に刺激にもなる。
「サーフィンカルチャーを広めたい」
「みんなで楽しくやりたい」
「新しくものにない古い物の味やカッコよさを求めたい」
今回フィルムカメラを持ってシャッターを切ってきた岸本さんが
ようやく「KEEP ON・・」への想いを語ったのは、印刷立ち合いの待ち時間のこと。
最初の見積依頼の電話とは打って変わって、私が興味をもって質問をしてからだ。
「好きなことを続けていく」というのは独特なメッセージを放ち、それは第三者を魅了するものになるようだ。
初めてつくった本というのに、こういう感じ、なんかいいよねっという空気が漂っている。
今、BASEやSTORESなど個人で販売できるプラットフォームがいくらでも用意されている。
プロに限らずアマチュアだって素人だって好きを追究すればビジネスになる時代。
紙とインキで出来た「オリジナルBOOK」という商品をつくって販売するのもオモシロいと思うのだ。
きっと同じ価値観をもった人はいるはずなので、ニッチな本はニッチなりに売れるだろうし、
売れなかったら名刺代わりに初対面の人に自己紹介がてらプレゼントしてもいいだろう。
デジタルにはないアナログならではの風合いと厚みは、手元に残る大切な価値が詰まっている。
物体である本を超えたモノとして本をつくる体験。
そんなお手伝いなら楽しいに決まっている。
さて、Vol2の題材は今回の発行記念ライブを行ったバーがある沖縄編ということ。
私の目の前で次が出来上がることを実は楽しみにしている。
「KEEP ON・・・」はコチラのサイトから購入できる
https://gunjyoumaru.thebase.in/
この活動が続いていくために、あなたにもスポンサーになって頂きたい!
企画営業推進部 小林